私は、元の世界に戻ってきた。
何か月も向こうに行っていたはずなのに、私が戻ってきたのは私が向こうに行ったその日。
次の日、おばあちゃんのお見舞いに行ったら、入院したのは昨日だと言われた。



まるで、あっちでの出来事が夢だったかのようで。



目を覚ましたのは、私が泣いてすがったあの神社。
でも、服装は制服ではなく、鬼羅がくれた着物だった。

そして、鬼羅がくれたくし。



それだけは、私が向こうに行っていた確かな証だった。





「・・・鬼羅」




名を呼べばこみ上げてくる涙。
もっと呼べばよかった。




最後の声届いただろうか。
私の声をずっと覚えていると言った。


私は、それが嫌で名を呼ぶ事も好きだと言うこともできなかった。



こんな事なら、言っておけばよかった。




「鬼羅・・・、鬼羅・・・、好きよ・・・」




こんなにも想いは溢れるのに。