「鬼羅・・・っ」




はじけた声に顔をあげれば、笑顔を浮かべた千菜・・・ではなく千代の姿。
鬼羅は切なく微笑むと千代に歩み寄った。




「鬼羅、今日も抱きしめてくれますか?」

「ああ・・・」




毎日のように、互いの存在を確かめるように抱きしめる。
そして確信する、互いがそこにいるのだと。





「少しの時間でも離れたくはないのに・・・」

「千代・・・」





鬼羅は一度強く千代を抱きしめる。
覚悟を決めるように。

この時間を終わらせる覚悟を。




「千代。・・・話したいことがある」

「なあに?」



穏やかに笑う千代は、これから言われる言葉をまだ知らない。
きっと残酷であろうその言葉を、言う時を鬼羅はためらいながらも千代の身体を離した。