鬼羅は、眠っている千菜を起こさないようそっと小屋を出る。
外では、先に起きていた琉鬼が火を起こして魚を焼いていた。



「千菜ちゃんは?」

「まだ寝ている。昨日、遅くまで眠れなかったようだったからな」

「そっか」




琉鬼はそう言いながら、たき火に木の枝を放り入れた。
パチパチと音を立て燃え盛る炎。

琉鬼は、その火を見つめながら微笑んだ。



用意した魚は五匹。
今までは自分のモノだけで十分だった。


鬼羅が封印され、千代もしに10年の間、ずっとここで一人で暮らしていたのだ。



他の鬼がいる集落にうつることも考えたが、どうしても鬼羅八千代と過ごしたこの場所を去ることはできず。
鬼羅が封印された場所にも近いためいつか封印をとける日が来ることをずっと願っていた。




その願いがかなった今、鬼羅に加え千菜という新しい仲間が加わり賑わう日々に幸せを感じていた。



口には決して出すことはないが、この穏やかとも思える日々をずっと待ち望んでいたのだ。