絶対に、状況は悪化した。

 寒気は最高潮に達し、ガンガンと頭痛までしてくる。


「……もう、限界」


 気力と体力をごっそり奪われ、ついでに体調不良で立っているのも億劫になってきた。

 ふらついて椅子に座るも、ガタガタと震えてしまう。


「姉ちゃん、顔色すげー真っ青じゃん」


 いきなりどうしたんだー? と、首を傾げる仕草まで憎くなった。
 息の根を止めるつもりで締めたのに、もうピンシャンしてやがる。



 死ね。このトラブル吸引体質が。


 内心で毒づいていると、背後からふわりと温かいものが肩に落ちてきた。


「もう長居はできませんね。脱出を考えましょう」


 発言の内容より、雑賀クンの行動に驚いた。
 肩にかかっているのは彼の上着だ。


「さ、雑賀クン。いいから」

「僕なら大丈夫です。それより、白衣一枚ですみません。上着はロッカーに置いて来ちゃったんで」

 どぎまぎしながら遠慮すると、手を重ねて押し戻してくる。
 それでも、はいそうですかと素直になれないのが、独り身女の悲しい性(さが)。