「お義姉さんって呼んで」

 見つめられた悠真クンは凍りついた。
 標的を定めた女豹のごとく、挑戦的に笑う。


「あんたがお義姉さんって呼んでくれたら、やったげる」

 普通ならここで「何、言ってんだよ」って空気になるはずなんだけど。


「悠真、言ったれ。減るもんじゃないだろ」



 気付けぇぇぇぇッ、この馬鹿者がッ!

 明らかにおかしい会話でしょ!
 何故、そこで姉の味方をするッ、桜沢·弟!!



「悠真」

 え、セクター長も?
 ここは遥香をたしなめるべきではないのデスか?


「前から思っていたが、おまえはハルちゃんに対して冷たいぞ。目上の人への態度が変えるなんて感心しないな」


 いやいや。拓真氏。
 それは、あんまりだ。

 彼は、危惧しているのですよ。
 長年に渡り、自分を虐げている女が義理の姉になる可能性を。
 あなたのお嫁さんになるのが嫌だと叫んでるのですよ。
 どうか気付いたげてください。


 遥香だって、そんな将来を見越して悠真クンに呼ばせたがってるんです。


 将を射んと欲すれば、まず馬を射よ。



 って、感じだろうか。