「正直つらいと思った事もあったけど…今は感謝してるよ、ピアノを教えてくれた事。」

ハヤテの言葉に、母親は穏やかな笑みを浮かべて、小さくうなずいた。

「チケット、用意するから。」

「ありがとう…楽しみにしてるわ。」

ずっと母親との間にあったわだかまりが、ハヤテの中でゆっくりと溶けて行くような、そんな気がした。



コンサートを無事に終えたその日、母親は優しくハヤテに声を掛けた。


“ハヤテ、ありがとう。今まで本当によく頑張ったわね。”


その言葉を聞いて、ハヤテはやっと母親に認めてもらえたと思った。