バゲット慕情



 ぱさり、と軽い音がした。

美智子が振り向くと、園田がエプロンとベレー帽を外して丸椅子の上に置いたところだった。


「園田くん、傘は?」


「ないです……いりません」


 長身が勝手口をくぐって駆け出した。

何のために、どんな言葉を提げて、その背中は駆けていくのか。

美智子はため息をついた。

遠目をすがめて、若い二人を眺めやる。

園田が声をかけたのか、華が立ち止まり、ビニール傘がくるりと踊った。


 春とは名ばかりの、冷え冷えとした朝である。

雨が降り続いている。


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バゲット慕情

おしまい