バゲット慕情



 工房でタイマーが鳴った。

ひよこの鳴き声を摸した音だった。

園田は、黙って席を立った。

華は、工房へ向かう園田の背中を、じっと目で追った。


 美智子は、華と同じ年頃の自分を思って、同情と軽蔑を猫撫で声に込めた。


「華ちゃんは妊娠しなかったのよね。

それは幸いだわ。

あたしはね、華ちゃんの年のころ、会社の同僚との間に子どもができて入籍したの。

でもね、旦那は暴力がひどくて、あたしは流産した。

あたしに比べれば、華ちゃんはまだまだ大丈夫よ。

ねえ?」