バゲット慕情



「結局、体の関係だけでした。

恋愛って何なのか、わからないまま」


 美智子の好奇心が鎌首をもたげ、嗜虐心が舌なめずりをした。


「なぁに、それ? どういうこと?」


「彼に呼び出されれば会って、体の関係だけを続けていました。

そんなつながりでも、何かの意味があると思っていました。

好きだと言われて、それにすがっていました。

汚くて浅ましい行為を繰り返していました」


 園田の手が、ほんの少しテーブルから浮いた。

華は、びくりと肩をこわばらせた。

園田の長い指は宙を泳ぎ、テーブルに落ちた。


 美智子は、コーヒーカップの取っ手に指を絡めた。


「好きでもない男の性欲を処理してやるなんて、暴力をふるわれるのと同じよ。

相手の都合のいいときに呼び出されて、することだけして、普段は恋人でもない関係だなんて」