「園田さんが、話を聞くだけならできるって、携帯電話の番号とメールアドレスを書いたメモをくださったんです。
それと、気付いてしまってごめんなさいって」
「あら、園田くんが何に気付いたの?」
園田が顔を上げ、華のほうへ、思いがけず強いまなざしを送った。
華は、赤いセーターの左の袖をまくった。
ぞくりとするほど白い腕だ。
そのなまめかしい肌には、切り傷とおぼしき直線の筋が、縦横に入り乱れて盛り上がっていた。
「……何なの、この傷?」
「一年前の秋ごろ、自分の腕をカッターナイフで切ることが癖になっていたんです。
傷が赤かったころは、洗い物のときに袖をまくっていると、目立っていたと思います。
今年は、夏の間も、長袖で隠していましたけど」
「どうしてこんなことを?
一歩間違えば危ないのに」
美智子は詰問の口調になった。
華は動じなかった。



