「適当に座っててちょうだい」
華は、ファンヒーターから近いカウンター席に着いた。
店内は、まだ十分に暖房が効いていない。
美智子はレジ台で新聞を読んでいたのだが、ミニキッチンに立って、自分と華のためにコーヒーを淹れた。
レインレインのオリジナルブレンドは、モカ・マタリをベースにしてあるので香り高く、サントスの酸味を加えてあるのでさっぱりと飲みやすい。
美智子はコーヒーを片手に、再び新聞に関心を戻した。
華は、カウンターの高椅子の上で、脚を組んだり組み替えたりほどいたりしていたが、やがて席を立ち、本棚の整理に手を付けた。
レインレインに揃えた本は、パンや焼き菓子をテーマにしたものばかりで、レシピやエッセイ、写真集などジャンルはさまざまだ。
本の整頓を済ませると、華は、手にした一冊を立ち読みし始めた。
華のカップの中身は空っぽになっていた。
ブラックのままのコーヒーは、カラオケで疲れた喉に、あっという間に飲み干されたらしい。



