バゲット慕情



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 三月一日の朝は暗かった。

今にも降り出しそうな空模様である。

湿度が高いために、寒気が体にまとわりついてくる。


 華は、六時少し前に現れた。

前髪が濡れていた。

寒い中を歩いてきたために、薄化粧の頬が少女のように赤い。

徹夜したというわりに、こざっぱりした顔だった。


「コンビニのトイレで、顔を洗って、化粧をし直してきました」


 華は照れ笑いをしながら、種明かしをした。

化粧といっても、この娘の場合、日焼け止めのベースクリームを塗り、リップクリームをつけている程度だろう。

あと、眉も少し書き足して整えているか。