バゲット慕情



 父がその女について何か話しているのを、美智子は耳にしたことがない。

女の話は、すべて親戚から聞かされた。


 女は、もともと酒場勤めをしていたという。

どんな男が相手でもすぐに股を開く女だったらしい。

美智子が父の子ではない可能性もある。

真人間の父がそんな女を引き受けたことが、美智子には不思議だった。

きっとだまされたのに違いない。


 それより、と美智子は話を変えた。

矢継ぎ早に言葉をかけなければ、華はそそくさと仕事を再開しようとする。


「華ちゃんは、四年間、よく続けてくれたわよね。

園田くんを除けば、今まででもいちばん長いうちに入るわ。

最初はね、華ちゃんは続かないんじゃないかと思っていたの」