***** 「来年が創業五十年になるらしいの。 ちっとも知らなかったわ」 翌日の仕事中に、美智子は華に言った。 華は、暇つぶしの拭き掃除を中断する。 「もうすぐ五十年ですか。 すごいですね」 華はわずかに目を見張り、わずかに眉を持ち上げた。 観察力のない人間ならば、華の表情の変化を見落とし、冷たく話をあしらわれたように誤解するだろう。