からん、と表の木戸のベルが鳴る。 いらっしゃいませ。 華は接客用の声を作った。 話はここで途切れた。 華の祖父ならば、美智子の父よりもいくらか若いはずだ。 華の親は大変な孝行者である。 華のような子を生んだという功績を立てたのだから。 あたしは父に何の孝行もしてやれなかった。 女ばかりの短大を卒業した後、服飾関係の会社に就職し、職場の同僚といい仲になって、気が付いたら身ごもっていた。 美智子は退職と入籍を決めた。 父は反対した。 美智子に甘かった父が、初めて美智子を怒鳴りつけた。