「えっと...のばら先生?
ちょっと遊んでたら水浸しになっちゃったんで
体操着貸して貰ってもいいですか?」
とっさに思いついた嘘をつきながら近くに駆け寄る。
「いきなり下の名前で呼んでくれるなんて嬉しいもんですね
桔梗に自慢しないと」
のばら先生はふんわりと笑う。
「....名前?のばらって苗字じゃないんですか?」
「んー?違いますよー」
先生は体操着を棚から取り出しながら平然と答えた。
名前じゃないの!?
ってことは私いきなり下の名前で呼んじゃったの!?
「あわわ!す、すいません!
私知らなくって...苗字教えてもらっても良いですか?」
「ふふふ、秘密です。
教えたら下の名前で呼んでくれなくなってしまうでしょ?」
私に体操着を手渡して、のばら先生はまた新しい飴をくわえる。
......不思議な先生だな。
私は近くのベッドのカーテンを閉めてその中で着替え始めた。
___________ようやく着替え終わった。
濡れてた分脱ぎにくいし大変だった。
「...ありがとうございました。
明日洗ってお返ししますね。」
そのまま保健室を出ようとした私に声がかかる。
「もっと頼っても良いんですよ。」
その言って手を振るのばら先生。
私は深くお辞儀をして保健室から出た。
.........先生は全部気付いてたんだ。
さっきの一言がどれだけ私を勇気づけてくれたか
先生は分かっているのだろうか。
