「何でこんな事になってるんだろうね?私が聞きたいくらいだよ」
あはは、と精一杯の作り笑顔で詩音君の方を向く。
「昼休み、話したい事があるから裏庭に来てね」
彼はいつも通りの笑顔で私に小さく囁いた。
周りの人には聴こえないように、気を使ってくれているんだろうか。
「詩音君から呼び出しなんて、うらやましーの」
カンナが小さな声で言う。
その顔は、数日前と同じテンションの高いときの顔だった。
それから、昼休みまでに色んな事があった。
移動教室から戻るたびに私物にイタズラされていたり、
教科書がなくなっていたり、
机の中が水浸しになっていたり、
正直言って、古臭いいじめだ。
結構辛いんだなぁ、いじめられるって。
まだ、カンナがいてくれただけよかった.....
そんな事を考えていたら、時は来た。
私は一人で静かに裏庭へ向かう。
誰にも見られていない事を確認しながら。
いつも、気付かないだけで誰かに見られてるんだよなぁ.....
というか、そもそも詩音君いないな...
「花梨ちゃん、こっちこっち!」
裏庭の端にある倉庫の中から手が出てきた。
私はとっさにそちらへ向かう。
「この中なら、誰にも見られないでしょ!」
詩音君は、私の気持ちを理解してくれていたようだ。
「.....ありがとう」
要するに、私がこんな状況に身を置く事となった理由が
バレているということだった。
