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「………もう!
なんなのよ、この森………。
次から次へ、うじゃうじゃと………魔物が多すぎるわ!
しかも小物ばっかり!!」
あたしはぶつぶつと独りごちながら目を閉じ、瞼の裏に、ゆらゆらと燃える炎のイメージを浮かべる。
途端に、にぎりしめた拳がじわりと温かくなり、ゆっくりと手を開くと、掌の上に小さな火が生じていた。
薄暗い森の中で、温度の高い青い炎が鮮やかに輝き、辺りがじわりと明るくなる。
「さあ、行きなさい!」
呟いて、親指と人差し指をぱちんと弾くと、火の粉がぱっと散った。
小さな火の粒は、飛んでいくうちにみるみる大きくなって、
あたしの周りに群がっていた、黒い小石のような風貌の魔物たちに纏わりつく。
小魔物たちはぎゃあぎゃあと叫びながら、森の奥へと逃げ帰っていった。
………ふん。
このあたしを襲おうだなんて、100万年早いのよ。



