部屋に戻ると愛恵はコーヒーを入れて ソファに深くうなだれた。

ジョー・サクストン・jr・及川

彼の顔と「僚」の顔が交互に彼女の中を巡った。
長谷川家には3人男兄弟がいた。

一番上が 地元で実家の病院を継いでいる。

僚介は 愛恵と康介の3つ上で、 生きていれば35歳だった。享年25歳。

遺影の写真とジョーの写真が 被る…

愛恵は高校と入学と同時にこの世界に入った。
一番初めに相談したのが僚介だった。

小さなころから、僚介が一番愛恵の面倒を見てくれていた。

スポーツ万能 頭もよく クラスの人気者…
将来も有望。

愛恵からしたら 彼は羨ましかった。

彼は愛恵の相談に 反対した。

芸能界なんか行くな。危険な世界だよ。

将来の夢や目標のある僚介には きっと愛恵の気持ちはわからないと思った。

デビュー当時から 特に 彼とのことは 騒がれる事なく 付き合いそのものは 順調だった。

そして僚介は日本の大学からアメリカ留学にすると、愛恵に伝えた。

愛恵はデビューして3年目でようやく 先の この世界での自分の方向性が見えて来たころだった。
僚介は
「一緒に行こう」
もちろん 誘ってくれた。
彼女のほうが、踏み切れなかった。

愛恵の決断をまたずに 彼の留学の日程は 着々と決って行った。

「俺は愛恵を愛してる。どこにいても。今すぐに一緒に来るのが無理でも、いつか愛恵にも分かってもらいたい。女優業をやめろとも、今は思っていないから」

今 行かねば 時間がないと言った。日本の大学で学術書ばかり読み、教授になる為の今の 日本の学会で 自分は生温い 肩書きだけにこだわる医者にはなりなたくないと言った。
彼を好きになって 本当に良かったと 思った。