康介は彼の衣類から 財布とパスポートを見つけ出す。財布には国際ライセンスの免許証 クレジットカード 現金3000円。パスポートには 【ジョー・サクストン・jr・及川】国籍はアメリカで、年齢は24歳。

そして、康介は驚いた。
処置中はあまりの顔の腫れ上がり具合にわからなかったが。

康介はパスポートを愛恵にも見せた。

愛恵も目を疑った。

「僚に…そっくりじゃない…」

「こんなに似てる奴居るんだな…」

「…。で、彼の様子は?」
「打撲ねんざ。顔面のあざはしばらく残るし。相当痛いと思うが。金も取られてないのを見ると酔っ払い同士のケンカだろうな」

「ねぇ、康介。治るまで彼を診てあげて…」
「わかってるよ」
康介は何時もの事だと思ったが、それ以上何も言わずに、ただ頷いて

「もう帰れ。30過ぎのじょゆーさんにはキツイ時間帯だぞ」

「うるさいわょ…」

愛恵は ベッドで眠る 彼の顔を目を凝らして見た。やはり 処置のガーゼで隠れていて、腫れ上がっているこの顔では、「彼」に似ているとは、到底思えなかった。

「送ってくよ」
康介は帰りに 買い物があるようだった。
「彼一人にしちゃってだいじょぶ?」
「鎮静剤うってあるからな。しばらく起きない」
途中の車内で、
「お前知ってたのか?」康介が口を開いた。
「彼が似てることを言ってるの?」

康介はタバコを咥えながら、あぁ と頷く。

コンビニで飲み物とタバコ ビールを買った。

車を路肩に止めると2人は しばしの沈黙。

「知ってるわけないでしょ。暗いし。血だらけだし…康介を呼ぶので一杯一杯…」
「だょなぁ~。まあ。しかし俺も驚いてるよ。どんな事情でアソコに居たのか知らねーが。…年が若いが。逆にそれが兄貴を思い出す」

愛恵も同じ事を 考えていた。なぜ康介がこの話をこんなに言うのか…

愛恵が車を降りる際に
「お前も、いい加減前に進めよ…」

愛恵はその言葉には 何も返さなかった。