本当は、自分も一緒だ。
康介の過去の女たちと 何も変わらない。

ただ…

言わないだけ…

康介とは 医大の頃からの付き合い。


実際 付き合っていたのは、卒業前から 研修医をしていた3年ほどだ。
1年の頃から、おなじゼミで、同じサークル。


恋愛感情で 好き だの 嫌いだのは 全くなくて、互いに 本当に 「友達」として 長い時間を過ごした。


だから、康介の彼女たちも、全て 見て来た。


康介は、本音を言わない男だった。


普段は、馬鹿丸出しで ふざけていない時の方が少ないが、

時折、寂しい顔をした。
きっと 本人は 気付いてない…。


彼の付き合う女たちは、
大概 優に対して 失礼な態度をとって来た。


その度に 康介は
「ごめん」と言うから
「馬鹿な女とばかり付き合ってるあんたも馬鹿だ」
と言った。


周囲は、康介と優がなぜ 付き合わないのかと、不思議がっていた。


2人とも、「付き合う」とか 「彼氏」「彼女」という 言葉によって
この 今のままで 十分に『いい関係』が 壊れてしまうのが、嫌だったのだろう。


少なくとも 優は いやだった。


何度かは 酔っ払って キス… その先までも あったが…


翌日には、何もなかった… ことにした。


別れの一番大きな理由は、彼女の海外での僻地医療をしたいという希望。

康介は、それには、付いて行く事は出来ないといった。

優も、付いてきてくれる・・・とは思っていなかったし、別れは、あっさりしたものだった。


海外へ、出てからも、数ヶ月に1度は手紙やハガキを彼に書いた。


自分の生きている証を残しておきたかったし、本当にもしものときは、彼に会いたいと・・・

そう思っていたから。