愛恵は、あの晩から ジョーの返事を 待ちきれないでいた。


仕事の合間に 康介に電話をいれる。

「はい。六本木診療所~」

「康介?」
「おう。どうした?」

「いや。なんもいってねーなぁ。なんかあったの?」

「オマエねぇ、奴もガキじゃねーんだからさ。心配しすぎ」


康介は忙しいから、夜な と言って、電話をきった。


医学書を読んでいた ジョーに 康介は、

「なぁ、ジョー。なんかオレに隠しゴトないか?」

「…」

「電話は愛恵からだった…」

「ドクター…」

康介は、彼の話を聞く前に 体勢を整える。

もちろん。
タバコを咥えて、火をつけた。


ジョーは、昨晩の出来事を話した。

「ばかじゃねーの。やりたいならやる。たとえば、それがコネでもさ。ハハハ。オレなら気にしない」


康介はそういっても、一番 コネだの そういうのが 嫌いだった… が…。
ジョーの背中を 押すべきだと思った…


「愛恵は、コネなんか作ってやるほど…優しくない」

康介は笑いながら、
「大体あいつが、コネや金使うなら、オレもっと金持ちな医者になってると思わねーか?」

ジョーは、笑った。

そして、
「ドクターは、愛恵さんがスキ?」


「好き?」

「あの愛恵さんを、そうゆうふうにいえるの、特別な関係だと思う…」

「…好きかどうかわからんね。幼馴染みとしてだいぶ長いし。お互いに恋愛感情はないな」

そう。

確実に… 愛恵の愛情は、常に 兄へ向いて居た。それは、兄が居なくなってからの 7年間も 変わらず 続いて…

恐らく これからも 変わらずに続いて行くのだと思った…


しかし、彼女の愛情は 今…
無邪気に 自分にこそ 愛恵の愛情が向いていることを全く気付かないでいる この 青年に 移ろうとしていた。


康介は、愛恵を… 「愛している」ことを 認めるわけには、昔から
そして今も、これからも いかないのだ…。

報われない。

それ以外にも たくさん理由はある…