「いえ。気を使わないで下さい。で、社長自ら飲み物をもって来てくださっているのは、理由があるのかしら?」

「えぇ。僕はメンドクサイのが苦手なんで率直に申し上げます」

「それが既にメンドクサイわ」
愛恵は笑った。
「ハハハ。一応ね。でわ。…」
彼は一呼吸置くと。
愛恵の隣に 座るジョーを見て
「藤倉さん…彼はどういった方なんですか?」

愛恵は 全て有りのままを話すのは 得策でないと
「友人よ。少しの間日本にいるわ」
「そうですか。実は先日彼の飛び入りのプレイが素晴らしかったようで、そのこともあり、藤倉さんには近々ご連絡させて頂こうとおもっていました」

「というと?」
愛恵は先の答えを急いだ

「彼が滞在されている間まあVISAの関係もありますが、彼が承諾してくれれば、キャッシュインハンドでDJをして頂きたいと思っています」

愛恵は これは 彼にとって ものすごく 意味のある事だと 理解した。

ジョーは 多分 オーナーと愛恵の 早い会話 内容は 全て 理解していないだろう。ビールを飲みながら 下のブースを眺めている。
「返事はいつまで?」
「なるべく…」
「明日までには…お返事出来るとおもう…」

「愛恵さん?ボクは今日やらせてもらえる?」

ジョーの質問に 愛恵は もちろんと答えた。

オーナーの村岡も、
「是非!」

ジョーは喜んで、ブースへと向かった。

数分後
ジョーのプレイが始まる。
2階から 愛恵と村岡は その様子を伺い見ていた。

「ほう!コレは想像以上だ…」
村岡は柏手を打った。
「ネェ、村岡さん。彼はそんなにすごいの?」
愛恵の質問に 村岡は ものすごく 簡単に答えた。
「アナタと同じか…まぁ、あか抜けてはいないし、まだまだ場数は踏んでいなさそうだけれど。彼の年を考えれば。まずいない…」

つまり、プロに なれる。

愛恵はブースでプレイに没頭する彼の姿に 魅入っていた。

それは 村岡も同じだった。