康介は彼に最大限の譲歩をした。

VISAのある間なら ここにいていいこと。

その間におばーさんが見つからなかったら、ここからは出て行くこと。

ジョーはそれまでションボリしていた顔に笑顔を見せた。

愛恵は、僚介を 思い出してしまった…

「おばーさん見つかるといいわね」

なるべく 彼に 関わるべき出ないと 愛恵自身が感じていた…

愛恵は診療室の外へ康介を呼ぶと なぜ あんな条件を出したのか 彼を責めた。
康介は
「俺がこうしなくても、オマエがしただろう。それだけだ」
愛恵は康介の鋭い目線に冷たさを感じた。
「分かってるだろうが、奴は兄貴じゃないぞ」
とどめの一言を付け加えた。

分かっている。彼が他人の空似だと…
また それが 例えば 恋に発展したとしても… 愛恵自身が 完全に自分自身に肯定的な理由を持てるか…

自分も傷つき ジョーも 僚介さえも傷つけることになるのは 目に見えて
康介は 知っていた…。
歯車は 既に 廻り始めていた…