―「…ん…ワッツ、ドック?」

―「来たぞ。彼女が君をここへ連れて来た。藤倉愛恵さんだ」

ジョーは起き上がると 「ありがとうございました。ぼくは、ジョー・サクストンです」
流暢まではいかないが 日本語で 愛恵に 挨拶をして 昨晩の経緯を話した。

両親が突然の事故死で 一人残された彼は 母方 のおばーさんを頼りに 一昨日日本についたが 迷子になり 挙げ句 あのざまだったらしい。

ハーフだ。

「ママが日本語をしゃべっていたから…少しわかる」

怪我をして 弱って見えるせいか 年より若く見える。

「…で、おばーさんはみつかりそうか?」

「わからない…途中でアドレスかいた紙なくした…」
「最悪だな」
康介は渋い顔つきになる。
「どうしたい?」
康介の質問に 彼は
「おばーさんを見つけて、出来れば日本にとどまりたい」といった。
もう 父方の親族も 近い身内では 本国に残っていないのだと言う。

彼は 働きたいといった。そして ここでの治療費も払いたい。
そして おばーさんを見つけたい。


彼の観光VISAでは 滞在が限られているし 不法滞在や労働をすれば 捕まる。末には アメリカ行きだし 二度と 日本へは 来れないだろう。

ジョーのVISAは3ヶ月。
この間に 全てがうまく行くとは思えなかった。