空港での一件は 数ヶ月 尾を引きずった。

彼女の勝手な行動に 事務所側もカンカンだった。
週刊誌もその日の夕刊 一面から 真っ昼間のスクープ 彼女と僚介の抱擁とキスシーンが どのタブロイド紙も一面を飾った。

内容は まったくどれもこれも うそ八百。

愛恵は おかしかった。
真実は 私と彼しか知らない。

みんな 想像力が逞しいのだ…

清純派 正統派で売り出していた彼女に こんなスクープは命とりだと。言われた。

しかし、この時 社長だけ
「これからが。正念場だ。良かったね。早々にアイドル女優を抜け出せるかも知らんよ」

愛恵をスカウトした 社長だった。

この時は まだ この意味が彼女には理解出来なかったが…

理解出来た頃には…

「女優・藤倉愛恵」には残るものが 多かったが…

女として、愛恵に残されたものは

愛する者の 突然の死 だった。