スイートな御曹司と愛されルームシェア（原題『かわいいイケメン、拾いました』）【後日談】

　咲良は創太をキッと睨んだ。彼が低い声で言う。

「……やっぱり俺みたいな男とは結婚したいとは思わないか」

　どこか落ち込んだような創太の口調に、咲良は首を傾げる。

「何の話ですか？」
「――半年前……付き合っていた恋人にプロポーズして振られた……。三十目前の女だったから、断るはずなど絶対にないと思ってたのに。〝私は別にお金に困っていないし、あなたは付き合うにはいいけど、あなたとの結婚は考えられない。あなたにとって私はアクセサリーのようなものだったんでしょ。結婚は体面だけじゃなく心も大切にしてくれる人としたいから〟と言われた」
「それは……お気の毒さま」

　確かに創太の育った境遇を考えれば、彼が素直な心の持ち主に育たなかったとしても理解はできる。けれど、一方でその彼女の言いたいことも痛いほどよくわかる。創太は容姿の点では申し分ないし、お金や社会的地位という点では自慢の夫になるだろう。

（でも、この人が甘い言葉をかけるところなんて想像つかないわ）

「なんてプロポーズしたの？」
「〝三十歳になる前に結婚してやるよ。その方があんたにとって都合がいいだろ〟」

　咲良は心底呆れて首を振った。