「なんだって? 黒谷さんは〝父がリビングで呼んでいる〟と言ってたぞ」
そこまで言って、創太が眉間に深いしわを刻んだ。
「父さんと黒谷さんで図ったか」
創太が身を翻してリビングを出て行こうとするので、咲良はあわてて走りより、彼のシャツの背中をつかんだ。創太が険しい表情で振り返る。
「なんであんたにシャツを鷲づかみにされなければならないんだ」
「それはあなたが出て行こうとするからです」
咲良は創太の鋭い視線を受け止めて言った。創太は咲良の手を振り払って向き直る。
「ここは俺の――俺たちの家だ。俺が出て行くわけなどないだろう」
「じゃあ私の前から逃げ出そうとしたんですね」
挑発的だったかな、と思いながらも咲良が見上げると、創太が口角を引き上げて笑った。
「あんたの口の利き方は相変わらずだな。俺にそんな態度を取れるなんておもしろい女だ」
「それはほめ言葉ですか?」
咲良はにっこりと微笑み返した。
「さあな。どうでもいいから、さっさと用件を言え」
話を聞く気はあるらしい。咲良は手に提げていたシックなダークブラウンの紙袋を差し出した。
「今日はバレンタインデーでしょう? だから、お義兄(にい)さんにチョコレートを作ってきました」
そこまで言って、創太が眉間に深いしわを刻んだ。
「父さんと黒谷さんで図ったか」
創太が身を翻してリビングを出て行こうとするので、咲良はあわてて走りより、彼のシャツの背中をつかんだ。創太が険しい表情で振り返る。
「なんであんたにシャツを鷲づかみにされなければならないんだ」
「それはあなたが出て行こうとするからです」
咲良は創太の鋭い視線を受け止めて言った。創太は咲良の手を振り払って向き直る。
「ここは俺の――俺たちの家だ。俺が出て行くわけなどないだろう」
「じゃあ私の前から逃げ出そうとしたんですね」
挑発的だったかな、と思いながらも咲良が見上げると、創太が口角を引き上げて笑った。
「あんたの口の利き方は相変わらずだな。俺にそんな態度を取れるなんておもしろい女だ」
「それはほめ言葉ですか?」
咲良はにっこりと微笑み返した。
「さあな。どうでもいいから、さっさと用件を言え」
話を聞く気はあるらしい。咲良は手に提げていたシックなダークブラウンの紙袋を差し出した。
「今日はバレンタインデーでしょう? だから、お義兄(にい)さんにチョコレートを作ってきました」


