けれど、創太とは咲良のマンションで険悪な雰囲気のまま別れて以来、一度も会うことができず、言葉を交わすどころか、顔を見かけたことすらない。

(やっぱり翔太くんの家族みんなに認められて結婚したいよね……)

 咲良自身、盛大な結婚式を行いたいとは思っていないし、翔太も少人数での海外挙式もいいなぁなどと言っていたが、それでも咲良は翔太と創太の関係が少しでも良い方向に変わって、創太にも祝福してほしいと思っている。

(手作りチョコくらいで私を認めてくれるとは思わないけど……話をするきっかけにはなるよね)

 そんな期待をしながら、義理の父と兄二人分のチョコレートをそれぞれ紙袋に入れ、翔太と同棲中のマンションを出た。そうして、創太たちの暮らす戸田邸へと電車で向かう。翔太は大阪フェニックスのコーチをしながら野球グッズショップで販売員としても働いていて、仕事が終わり次第、戸田邸に来て一緒に食事をすることになっている。

 一人で義父たちを訪ねるのは初めてのことだったので、咲良は緊張しながらインターホンを鳴らした。

「咲良さまですね、お待ちください」

 家政婦の黒谷(くろたに)の声がして、すぐに玄関扉から五十代前半くらいの小柄な女が出てきた。玉石の敷かれた前庭を歩いてきて、頑丈な門扉を開けてくれる。