金曜日。
新歓パーティーの朝。


「…今夜遅くなる。会社の新歓パーティーあるから」

ご飯食べながら話した。
例によって泰はだんまり。
母は「またなの…⁉︎」と呆れた。

「あんたのとこの会社、呑みが好きだねぇ…」

(…全く。その通りです…)

間違いないから無言。
こんな慣習知ってたら、入ってないって。

「なるべく早く帰るから。夕飯もいらないから」
「はいはい。分かってるよ」

おざなりな返事。
先月あったばかりから、無理もないけど。

(1人5000円か…厳しいなぁ…)

学資保険や生命保険。貯金もしてる私には、殆ど余分なお金は残らない。

(来月切り詰めるしかないか…極力、電話とか控えて…)

あれこれ考えながらの出社。
参加する前からこれだから、楽しもうという気にはならない。


「おはようございます…」

誰もいないフロアに挨拶。
電気もついてないと、ただの倉庫って感じがする。

「おはようー!ハニー!」

最上階から声がした。

(ハニー⁉︎…どこの誰…⁉︎)

辺りをキョロキョロ見回す。
階段の方から下りてくる靴音。踊り場へ駆け寄った。

「おはよう…今のハニーって、あなたが言ったの⁉︎…」

呆れ顔で聞く。
ネクタイを緩めに結んだ『れんや』君が、笑顔で近寄ってきた。

「そうです。だって、今日はオレの彼女でしょ!だからそれらしく聞こえるように…」

アホらし。
ただのカモフラージュか…。