電車を乗り継いで1時間弱。8時半前に会社に到着。

(…退社してから12時間以上経ってないよ。労働基準としてどうなのよ…これ…)

そんな疑問を抱きながら、社服に着替える。
この会社の良い所は、制服があることと、クリーニングは自分がしなくてもいいってこと。

その二つのお陰で、私は経済的に助かってる。

(そうは言っても、通勤用の服いるけどね…)

女性が多い職場。
しかもアパレル商品も扱うようなトコだから、いい物かどうか、直ぐに見分けができてしまう。

(でも、いいの!多量生産品で…)

着まわしが出来て安くてラク。
何よりそれが1番!

肩より少し長めのストレートボブをシュシュで結ぶ。
身だしなみを整えて雑貨フロアへ行く。
6階まで階段を使って上る。足腰が丈夫になったのも、この会社のおかげ。


フロアに一番乗りするのは、いつも私。
だから、電気をつけて換気扇を回す役目もしてる。
…でも、今日は珍しく違った。


「…あっ、山崎マネージャー…」

昨日作ったディスプレイの前に立ってる。
この人がこんな早くから仕事場にいるのなんて、初めて見るかも。


「…おはようございます」

売り場の手前で立ち止まって挨拶。
山崎マネージャーは私の声に気づいて振り返った。


「…おはよう…早いね」
「あ…はぁ…」

それ、こっちのセリフですけど⁉︎

「マネージャーも今朝は早く来られたんですね…」

珍しい…とは、言わずにいるか。