美人に言われた。
あれは本気にしていい⁉︎
マネージャーに頼まれたから、ムリしてるんじゃない⁉︎

……気にはなる。
大手メーカー『美粧』のショールーム。
そこで、どんなふうに商品が並んでるのかが見てみたい。
自分が働ける場所なのかどうか、確認してみたい。


『お前に向いてる』

彼の言葉通りなら、試してみたい気もする。
自分のキャリアを。
これまで培ってきたことの全てを…。


「お母さん!ばあちゃんから電話!」
「はいっ!今行くっ!」

マズった…。
今日、病院寄るの忘れてた!

慌てて中に入る。
さっきまでしてたトモダチの顔もコイビトの顔も忘れて、母や娘に戻る。

瞬間、少し切なくなる。
子供の前で、彼のことを『トモダチ』と言わなければならない。
それがスゴくやりきれない。

…いつまで?
ずっと…?

寄り添えないままで終わる…?
私は…

(あの人と幸せになりたいのに…)