「…」


「由羅?」

急に黙り込んだ由羅を見る。


「香里奈…気づいた時には遅かったなんてこと、たくさんあるけど、なによりもつらいことなんだからね?」

…由羅?


「それって…」


「ほら!早く座らないと!もうみんな席についてるよ」

私の周りはもう座っていて、席を借りていた男の子だけが困ったようにこちらを見ていた。


「あ、ごめんね」

私は一言謝ってからいそいで席に着いた。


『気づいた時には遅かったなんてこと、たくさんあるけど、なによりもつらいことなんだからね?』

それってどういう意味?

聞くタイミングを逃した言葉がこれ以上発されることはなかった。



ふと、光を見た。

光もこちらを見ていて、目が合う。

光は驚いたように目を見開いた。

いや、びっくりしたのこっちだから…。


ドキッ


ん…?

ドキッて何?

何、今の…。

光にドキッてどうなの?


『バーカ』

光は口パクで言うと前を向いた。

ムカッ


ありえない!

『バーカ』ってなによ!!

一応学年2位よ!

いつもトップの光には敵わないけど!

ほかの子にそんなこと言ったことないでしょ!?

ほかの子には優しいくせしてなんで私には意地悪かな!!

光だったらこの学年の誰にでも『バーカ』なんて言えるのに!!


私はムカついて、フンっと前を向いた。