~光 side~


「光くん」


先生への用事が終わり、職員室を出たとき、西園寺が壁にもたれかかっていた。


「…どうした」


「香里奈のこと、避けてるんだって?」

こいつはいっつも情報をどこから…


「…別に」


「私のせい?」


「そんなんじゃねえよ」

それだけじゃ、ない。


「じゃあなに?隠し事してる香里奈に合わす顔がないとか?」


「…」


「香里奈、哀しそうな顔、してたわよ?」


「…」


「香里奈が避ければ怒るくせに、自分が香里奈を避けるとわね」

鼻で笑う。


「うるせぇよ」


「香里奈のこと、泣かせたら許さないわよ?」


「…じゃあ、どうしろってんだよ。言えってのか?」


「…いつかは、バレるわ」


「だろうな。でも…」


「香里奈には、笑っててほしいのよ」

そんなの、俺だって…


「結局俺は、いつかはあいつのそばを離れるんだよ」


「じゃあ、なんで…!」

そりゃ怒るよな。

やってることが矛盾してるなんて、わかってんだよ。


「…止められねぇんだよ」


「ひか…「好きなんだよ。香里奈のことが。好きで…仕方ねぇんだよ」」

そばにいたら言いそうになっちまう。

言いたくて、抱きしめたくて。

仕方なくなっちまう。

言えもしねぇくせに。


「…もう、俺が離れるしかねぇんだよ」

気持ちがあふれる前に。

言ってしまう前に。


「バカね…もう、あふれてるじゃない」

哀しそうに言われた。


「…悪い」


「私たちも場合は、気持ちなんて関係ないことなのよ。だから…謝らないで」

そうだな…俺たちは、いつになったら、解放されるんだろうな。


「じゃあ…」

俺は教室に向かった。