「よし!準備完了!」

カチャ


「おはようございます、お父さん」

私はダイニングのドアを開けてお辞儀をした。


「おはよう、香里奈」

一番奥の席で笑顔で挨拶してくれたのはお父さん。

私は水月財閥の一人娘。

お父さんはそこの社長だ。

周りのお父さんは厳しかったりするみたいだけど、私のお父さんはそうでもない。

お母さんは、いないけれど、優しいお父さんと、光がいる。それに、早苗さんたちもいてくれるから、寂しくないんだ。


「お嬢様、こちらへ」

光が椅子を引いて待っていた。

そうだ!急がなくちゃ!

「うん」


「光くん、いつも悪いね」

苦笑したお父さんがいう。


「いえ、私はお嬢様の執事ですから」

そう言って光は笑った。


「そういえば、聞いたんだが……」

お父さんがふと、私たちを見て言った。


「学校では、恋人だと思われているんだって?」

ゴホッ

そんな言葉に思わずむせた。


「ゴホッゴホッ」


「お嬢様!」

光がタオルを口に当ててくれる。


「大、丈夫、よ」

恥ずかしい〜〜


「旦那様、それはただの噂でございます」


「そうかそうか、いや〜ビックリしたものでね。まあ、昔から一緒にいるぶん、他のところより仲がいいからだろうな」


「おそらく、そうであると……」

光、落ち着いてるなぁ〜

焦った自分がバカみたい。





光は、私をそんな風に見てないのに……


「お父さん、私たち、そんなんじゃないわよ?」


「わかっているよ、悪かった」


「いえ、とんでもございません」

光が頭を下げた。


「光はいつもそばにいてくれるから、そう思われるだけだわ。学校では、普通の幼なじみとして、過ごしているしね」


「そうでございますね」

なんか、よそよそしい……。


「そうなのか?」


「はい、お嬢様があまりにも告白をされすぎて、危ないので……」

告白?

されたことないんだけどな……。


「あぁ、そういうことか……」

お父さんは、わかるの?


「はい、報告せず、申し訳ありません」


「いや、いいんだ。香里奈のことは君に任せているからね。これからも頼むよ」


「もちろんでございます」

なんの話?

キョトンとした顔で光を見た。


「お嬢様、もうよろしいのですか?」

……なんのこと?

光の目線を追う。

ああ、ご飯か。


「うん」


「はぁ…毎朝言っておりますが、もう少し、朝はしっかりお食べください」


「食べたわよ」


「クロワッサンひとつにオレンジジュース。これだけではしっかりと言うには不十分でございます」

呆れたようにため息をつく。


「だって、お腹すいてないんだもの」

仕方ないじゃない?


「そういう問題ではありません。ただでさえ、少食なんですから……」

でた、光の小言……長いんだよなぁ〜


「まあまあ、光くん」

お父さん!救世主!


「だって!光!」


「でしたら、仕方ありませんね」

おっ?いい感じ?


「これから、お嬢様の分の昼食を倍にしてもらうよう、シェフに頼んでおきます」


笑顔で言った。

な!?


「それが嫌でしたら、もう一つくらいはお食べください」


「……はーい」

私はゆっくりと食べ始めた。