「ん…」


「光。目、覚めた?」


「お嬢様…」

あ、そっか。

さっきは熱でわかんなかっただけで、家だから執事モードなんだ…。

なんか、さっきまで普通だったのに…変な感じ……


「申し訳ありません、ご迷惑をおかけして…」

どうして?

どうして光が謝るの?

だって…光は、悪くないじゃない…


「大丈夫よ」


「昨日は、旦那様が帰ってこられる日でしたのに…」


「そういえば、見てないな」


「挨拶に行かれなかったのですか?」


「まぁ、ね」

光の看病してたらすっかり忘れてたや…


「もしかして、私のそばにずっといてくださったのですか?」


「…大丈夫よ」

否定は、できない。


「お嬢様…!行きましょう。今いけばまだ間に合います」

光が私の手を握る。


「いいわよ」


「ダメです。せっかく久しぶりに帰ってこられたのに…」


「大丈夫よ。また会えるんだから」

一生会えないわけじゃないしね。


「ですが…」


「気にしないで?」


「お嬢様…」


「ごめんね、光。今日、私も休みたいんだけど、今日のHRさすがに実行委員が二人もいないの大変だから…」


「私も行きます」


「今日は休んで?」


「お嬢様を一人で行かせるわけには!」


「私は大丈夫だから」


「お嬢様…」


「光が反対すると思って、ちゃんと車も用意してもらったの」


「…」


「迎えも頼むつもり。だから、光はなにも気にしないで」

光が言うことくらい、わかってる。


「ですが…」


「だから、ほら。病人は寝てて?」

ずっと、一緒にいたんだから。


「…申し訳、」


「謝らないで」

ずっと、隣にいたんだから。


「行ってくるね、光」

私はニッコリ笑った。


「行ってらっしゃい、ませ。お嬢様」

光はキュッと腕をの力を込めてから、離した。


コンコン


「お嬢様、」

私が立とうとしたときノックされた。


「はい?」


「ここにおられたのですね」

ドアから顔を出したのは…


「早苗さん」


「光さん、大丈夫ですか?」

早苗さんは心配そうに光を見た。


「はい」

大丈夫じゃないくせに…


「それはようございました」


「なにかあった?」


「準備が整いました。用意をしてまいりましょう。今日は、私が学校まで付き添わせていただきます」

あ、そういうことか…


「よろしくお願いします。早苗さん」


「こちらこそ。では、どうぞ」

早苗さんはドアを開いて外に出た。


「じゃあね、光」


「よろしくお願いいたします」


「はーい。ゆっくり休んでね」

私はそう言って光の部屋を出た。


「お嬢様、どうされたのですか?」

ダイニングに向かっていると、早苗さんが言った。


「へ?」


「そんな浮かない顔をなさって…」


「…どんな顔、してる?」


「んーボーっとしておられますね」

ボーっとか…


「なんか…」


「どうかなさいました?」


「わかんない。なんか…さみしい?」

なんだろ…

これ…


「光さんがいないのは初めてなのでは?」

確かに、そうかも…

物心ついた時からずっと光が隣にいて。

私が熱で休んだ時は私のそばについていてくれた。

いつだって、光は私のそばにいてくれたんだ。


「お嬢様は、お優しいですね」


「え?」

どうして?

寧ろ、ひどいと思う。

だって、光は何があっても、私のそばにいてくれた。

そのあと、迷惑をかけた人にはきちんとお詫びをして、カバーしてくれてた。

なのに、私は弱ってる光を置いて…

光は、あんなにさびしそうにしていたのに…


「だって、あそこで、お嬢様まで休む。って言っていたら、光さんは行くって言っていたでしょうから。お嬢様は無意識にそれを感じて言ったのでは?」

そうなのかな…

私は無意識にそんなことを、感じていたの?

でも、もしも、そうだとしたら…嬉しいな…。