「おっそいな〜光」


「そうね。どうしたのかしら」

これ以上一緒に待たせるのも悪いしな…


「光、なにかあったのかも。私探してくるよ。由羅、先に帰ってて?」


「でも……」


「ね?」

きっと、由羅はこれで……


「……わかった。じゃあ、帰るね?」

やっぱり


「うん!」

私は笑って頷いた。


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「光〜?」

会議室を覗く。


「あれ?いないや……」


「あれ?香里奈ちゃん?」

あ、同じクラスの光といつも一緒にいる……

名前は、えーと


「那月くん?」

確か、光がそう呼んでた。


「嬉しいな。名前覚えてくれてたなんて」


「いや、私に覚えられたくらいで……」


「だって、香里奈ちゃん、名前覚えるの苦手でしょ?」


「うっ……」


「まぁ、俺が光といつも一緒にいるからだろうけどね」


「い、いや、そんなこと、ないよ?」


「じゃあ、俺の苗字言える?」


「そ、れは……」


「那月くんって言ったのは光が那月って呼んでるからだろ?」


「よくおわかりで……」


「ははは、いいよ。これからもそう呼んでよ」


「はい」

ごめんなさい。

でも、仕方ないじゃない?

苦手なんだもん。


「あ、もしかして、今も光探してる?」


「あ、うん」


「光、さっき呼び出されたんだよ。案内するね」


「いいよ、ここで待つよ?」


「戻ってくるか微妙だから」

あ、そっか……


「じゃあ、お願いします」

そして、私たちは光のところへ向かった。


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「それにしても、噂って本当なんだね」


「噂?」

聞いたことないな……


「うちの学園のお姫様は天然で学園の王子様の隣にいる上、名前を覚えるのがすごく苦手で、道も覚えれてなくていつも誰かのそばにいるって」

お姫様?

王子様?


「そんな子、いるの?何年生?」


「え?」

ビックリしたように目を見開かれる。

ん?


「ははは、ほんとに天然なんだ」


「え?」


「あー、気にしなくていいよ。お姫様の正体は言っても信じなさそうだな、これは。んー、あ、王子様は光のことだよ」

光が王子様?

そっか、人気者だもんね。


「じゃあ……お姫様は那月くん?」


「ははははは!」

え、そんなに笑う?


「違う?」


「うん、違うかな」


「そっか……」


「でも、俺以外にいつも光のそばにいるのなんて限られてるよね?」

ここまで言ったらわかるだろう。

みたいな顔してるけど、誰?

もしかして……


「光って、彼女、いるの?」


「え?いないと思うよ?」


「そっか」

よかった……


「光のこと、好きなんだ」


「へ!?」


「わかりやすいね」


「うそ!?」

なんでわかるの?

もしかして、光にもバレちゃったり……


「ああ、安心して。光も若干天然混じってるからわかんないと思うよ」


「よかった……あ、那月くん」


「わかってる。言わないよ」


「ありがとう」


「がんばれ」


「ありがとう!」


「あ、ここからは、ちょっと静かに」

那月くんが人差し指を唇に当てた。


「……?」

そう言って着いたのは、屋上の扉の前。