風は囁く「君と輝きたいから」

「それに、人の顔って覚えるの苦手なんだ。声なら聞き分けられるんだけど」

俺は詩月さんの言い分があまりに可笑しくて、声を上げて笑った。


「詩月さん、お腹痛いっ……それって問題ありすぎ」

もしかしたら、詩月さんは俺たちXCEONのメンバーの顔も、桃香さんの顔も、覚えていないんじゃないかと不安になる。


「遥、何もそんなに笑わなくても」


「だって……自分を抱きしめて、慰めてくれた女の子を覚えてないんだもん」


「あ……コンマスの如月さんだとばかり――すみません」

詩月さんは頬を紅くして、頭を下げる。


「別にいいわよ。あなたが、おばあちゃんのお弟子さんで、音楽にしか興味がないのは聞いているから」

小百合さんは、明らかにふてくされている。


「おばあちゃん!?」