俺たちは撮影衣装のままだった。

5月中旬。
フローラ化粧品、夏バージョン口紅「ロマンス」CMの試写会。

番組録りを終えた後、真っ直ぐに駆けつけた。


「忙しそうだな」

詩月さんはフローラ化粧品の広報室で、顔を合わせた俺たちに開口一番、そう声をかけた。


「周桜さん、そう言う周桜さんも忙しそうやん」

昴が無表情で言う。

俺は、その後ろで首を傾げた。


「あれ!? 詩月さん、少し痩せた?」


「まあね……」

詩月さんは薄く微笑み言葉を濁す。


「元から細いんだからさ、無理しないようにね」

思い切り明るく言う。


「ありがとう」

詩月さんは、はにかむように言うと、澄まし顔に戻った。


「今度のCMもスゴく楽しみなんだ。
僕らは、アフレコに合わせて、演奏してるふりだけだったけど」

空は申し訳無さそうだ。