詩月さんは支えられていなければ、立ってさえいられない状態だった。

「周桜くん……」

 郁子さんが詩月さんを心配そうに見つめ、泣きそうな顔で佇んでいた。

「いつまで耐えれば終わるのか? 俺に聞くな……お前はバカだ。無茶をし過ぎる」

 詩月さんの体を支えている男性が詩月さんに叫ぶ。

「……Lorelei'm nicht」

 詩月さんの口から悲痛な声の呟きが漏れ、ふらつく詩月さんの手から楽譜が滑り落ち、バラバラと音を立て床に散乱した。

その中の数枚に目が吸い寄せられた。

太字で楽譜に書き込まれた鮮やかな赤い文字と言葉が、余白にびっしりと書かれていた。

悲惨な楽譜に背筋が凍り、目を疑った。

昴は蒼白になり、ひきつった声をあげた。