風は囁く「君と輝きたいから」

そう言った安坂さんの力強い言葉と自信満々な顔を鮮明に思い出す。

詩月さんのヴァイオリン演奏には、辿々しさが全く感じられない。

詩月さん自身の表情も戸惑っている感や悲壮感は、微塵もない。

「すごい演奏ね」

 小百合さんの声が上擦っていた。

オーケストラ演奏で聴くと、歌うよりも遥かに迫力があるなと思う。

「ROSE」には「凍えるような冬の雪の下でも種子は太陽の愛を浴び、やがて訪れる春に、薔薇という名の花を咲かせる」という歌詞がある。

そう「冬は必ず春になる」という意味の歌だ。

桃香さんが時々口ずさんでいる歌も「ROSE」だ。

詩月さんのヴァイオリンの音色がオーケストラと客席、会場内の全てを包み込む。

詩月さんは俺が歌いたいと思った瞬間、演奏を中断し客席に向かって、弓をひと振りした。

「Zusammen singen! 一緒に歌って」