風は囁く「君と輝きたいから」

俺は祈る気持ちで「大丈夫だ」と、心の中で呟いていた。

舞台の照明が明るくなり、指揮者に続きオーケストラのメンバーが定位置に着く。

繰り返される歓声は「詩月」だ。

詩月さん1色だった。

詩月さんは大きく深呼吸し、胸に手を当てる。

歓声で沸き上がっていた会場が、静まり返り咳1つできない緊張感が走る。

詩月さんはサッとヴァイオリンを構え、微かに笑った。

指揮者がタクトを降り下ろすと、さざ波が寄せるように聴こえてきたのは、俺も知っている「ROSE」だった。

アマンダ・マクブルームが作詞作曲した「ROSE」の日本語タイトルは「愛は花」だ。

ハッとするほど清々しく奏でられる。

 ――周桜は街頭演奏を中学2年生から演っていて、咄嗟の対応や即興演奏に長けている