風は囁く「君と輝きたいから」

「周桜は去年の秋に腱鞘炎だと診断されていて、練習時間を今も制限されているのが嘘みたいだ」

「嘘やろ!? 腱鞘炎って、めっちゃ痛いんちゃうん」

 昴の声が裏返っている。

「信じられないだろ。周桜のあんなデタラメな運指で、腱鞘炎にならないほうがおかしいし、あんな弾き方で、あの演奏は反則だ」

「デタラメ、どういうこと? 金管楽器の人たちが何か言っていたけど……そんなに滅茶苦茶な弾き方なんですか?」

 空が目を見開き訊ねる。

「お前ら、撮影の時に気づかなかったのか。腱鞘炎だと言われ、今でも矯正していて、だいぶんマシにはなったけどな。指使いや弦の押さえ方が我流なんだ。ヴァイオリンは5才から正式に習い始めたんだが。リリィが10年掛けても矯正できなかった。詩月は腱鞘炎と診断され、必死に矯正してる。おふくろさんが自宅でヴァイオリン教室をやっていて、詩月にとってヴァイオリンはオモチャがわりだった。見よう見真似で聴こえてくる音を再現しながら弾いたんだろ。腱鞘炎で演奏家を諦めたおふくろさんを慰めるために必死でな」