風は囁く「君と輝きたいから」

「Nフィル内でも、詩月は色々あるみたいだしな」

 俺の頭の中をローレライとオルフェウスが、ぐるぐる回っていた。
俺は詩月さんという演奏家がどういう演奏家なのか、話を聞くたびわからなくなる。

「オーケストラはチームワークなのに何で苛めがあるのかがわからない。よく耐えてるよ」

「出の前の周桜は別人だよな。緊張なのか震えていて、こっちまで緊張してくる」

「で、あの演奏だからな。オケの連中は堪らないよな」

昴が目を丸くし、恐る恐る岩舘さんを見上げる。

「声をかけるのも可哀想になる。あんな様子で舞台に上がれるのかと、毎回思うぜ」

 俺には撮影の時に感じた詩月さんのオーラと、Nフィルコンサートの開演前に緊張で震えている詩月さんの姿が、どう想像しても結びつかない。