風は囁く「君と輝きたいから」

「いいだろう? オルフェウス」

「それは詩月がそう呼んでるだけだろ。神話の竪琴奏者『オルフェウス』に似ていると」

「周桜らしいよな。これを見てギリシャ神話に結びつけるなんてな」

 安坂さんが穏やかに笑う。

「オルフェウスは竪琴の名手で、その音色に野獣も自然と聞き惚れたと言う。俺はオルフェウスが周桜に似ていると……」

「ローレライとオルフェウス。片や音色で船乗りを惑わす。片や音色に聞き惚れるほどの名手。矛盾してるだろ」

 岩舘さんは今日も不機嫌で無愛想だ。

「周桜はNフィルでの演奏で好評価もされているけれど、『ローレライ』だと批判もされていてね」

 俺にしがみつき、震えていた詩月さんを思い浮かべた。

「演奏する周桜の、あの圧倒的なオーラを感じてビビらない方がおかしい。がら空きだったNフィルが、毎回チケット完売しているんだ。ケチの1つもつけたくなるさ」