「4月からな。頭の良し悪しなんて、そんなに変わらない。やる気の問題だ。ヴァイオリンの師匠の受け売りだが『目標を自覚する時、才能は劇的に伸びる』」

 周桜さんは真剣な顔で言う。空がポツリ「学校の先生かよ」と言いながら、不機嫌そうにはしていない。

「周桜さんみたいな先生がいたら俺、いっぱい勉強するかも」

 俺は言い、照れ隠しにニシシと笑って見せる。

着替えをする周桜さんの細い腕、薄い胸板、白い体が剥き出しになる。

胸に数本ある傷、その内の1本はまだ新しい。

そこだけ妙に変色した傷が痛々しく、見てはいけないものを見てしまった気がした。

 ――心臓病だ。周桜さんは心臓が悪い

 そう確信し、目を背けたくなる。

昴は周桜さんの胸の傷痕や細すぎる体に一瞬、顔をしかめサッと目を逸らした。