「彼らをよろしく、そして貴方ももっともっと輝きなさい」と、彼女の満面の笑みが僕を包み込んだ。


「舞園さんにはずっと心配ばかりかけた。元気で無理をしないでと、伝えて」

手紙は飛行機の中で、ゆっくり読もうと思う。

安坂さんの横で、緒方はしおらしく黙ったまま俯いている。


「郁。ほら、ちゃんと挨拶くらいしろよ」

緒方は安坂さんに言われて、やっと顔を上げる。


「周桜……くん」


「緒方、元気で。待ってるから、ウジェーヌ・イザイのピアノコンクール」

緒方は、コクり頷く。


「じれったいな」

理久が緒方の背を押す。


――あっ!?

緒方が躓くようによろけ、体が前のめりになり、僕は慌てて、緒方を抱き止める。

頬を染め、涙を浮かべた緒方の顔。

「ありがとう」も「君がいたから頑張れた」も、じゅうぶんに伝えきれていない。