Xceon(エクシオン)コンサートで詩月さんの弾いた「Jupiter」と、アンコールで詩月さんが「Jupiter」に絡ませた「愛の挨拶」の演奏。

俺は詩月さんの姿や演奏を、鮮明に思い浮かべた。


――「周桜詩月の音色は、日本に留めておくには狭すぎる。
彼の才能は海外にあってこそ磨かれる」


詩月さんは、この先どうするんだろう、ふと考えてしまう。


「悠長に喜んでいていいのか? 留学しちまうかもしれないぜ、周桜詩月は」


「周桜詩月が留学したら、お前ら大丈夫?」

ざまあみろって言われているような、先輩や同期、後輩の冷たい視線。


「留学って、大丈夫なのか? 周桜って体が……」


「実力は凄いかもしれないけど、あの体で留学なんて無理だろ」


「だよな。その雑誌だって、親の七光りで書かれた記事なんじゃないか?」