病室で、ヴァイオリン演奏をした周桜くん。

マネジャーと何を話したのか?

周桜くんは「自殺未遂は誤解だった」と話しただけで、多くを話さなかったという。

梅雨の晴れ間。
照り付ける陽射しが容赦ない。

学舎の講義室の涼しさが恋しくなる。

集中講義で午前中いっぱい缶詰にされ、思い切り背を伸ばす。

正門側には日陰が少ないけれど、裏門側には日陰が多い。

大木の下に、煉瓦を数段積んだ円形や四角形の段差は、腰を下ろすには丁度いい。


「もう少し左に」


「こっち?」


「もう1歩、左」


「こう?」


「そう、いいみたい」

裏門のシンボル竪琴を弾く男神像の前。

度々、見る光景だけど、いつも何故だか立ち尽くす。


「せーの!」

後ろ向きに、勢いをつけて投げた銀貨は、放物線を描いた後、鈍い音を立て台座に転がり煉瓦を敷き詰めた地面に落ちた。


「……残念」