――「『Jupiter』は壊さないから……」

彼の言葉を思い出し、改めて彼のスゴさを思い知らされる。

演奏をしている俺たちにも何が起きているのか、わからない。

満天の星空を見上げ、仄かな光が無数に瞬く空間から、羽衣茉莉花の白い花びらが、地上に舞い降りてくる錯覚を覚える。

薄く微かに紅く色づいた彼の頬、額には汗が滲んでいる。

「アドリブ演奏、即興演奏は彼の得意とするところだ」と何度も聞いていた。

ポスターに映ったお仕着せの笑顔でもプロモーションビデオでも見せていない優しい表情の彼がいた。

ギュッと胸が締めつけられる甘く優しい音色の響きが切なく、涙で視界が滲む。

彼は1曲のヴァイオリン演奏で俺たちを魅了した。